麻酔について

麻酔について

“エーブ クリニック”の麻酔の考え方

手術をお受けになる患者さまは誰でも皆不安な気持になりますが、それは手術結果に対してだけではありません。『手術中の痛みに耐えられなかったらどうしよう』『全身麻酔中に目が覚めたら怖い』『手術が終わって意識が戻らないかもしれない』といった麻酔に関しても不安な気持ちを抱えてしまいます。 あなたは麻酔に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。単に『手術の痛みを取るもの』『眠らせてしまうもの』と考えていらっしゃるかたも多いと思います。しかし麻酔の役割はそれだけではありません。麻酔の効果によって手術の結果が左右される場合もありますし、何より手術中に麻酔が安定していないと危険な状態に陥る可能性があります。 このページをご覧いただいて、麻酔の種類や特徴、安全性などにご理解が深まりましたら、麻酔に対する不安も解消されると思います。“エーブ クリニック”は、患者さまが不安やストレスの無いリラックスされた状態で手術をお受けいただくことが、手術の成功へのポイントの一つと考えております。

麻酔について:“エーブ クリニック”の考え方

麻酔の種類

  1. 局所(浸潤)麻酔

    いわゆる「局部麻酔」のことで、麻酔液を注射することにより、その部分を麻痺させて痛みを感じなくする方法です。
    小範囲の部分を手術するときに、用いられる方法で、ほとんどの美容外科手術はこの方法で行なわれます。

  2. 神経ブロック・区域麻酔

    局所麻酔よりも少し広い範囲を麻酔したいときに行ないます。知覚神経の根もとに少量の麻酔薬を作用させることによって、その神経が支配している領域を広範囲に麻酔(ブロック)することができます。鼻の手術のときなど、鼻の皮膚に直接注射針を刺入するのは痛みが強いので、左右の頬にブロック麻酔(三叉神経第2枝:眼窩下神経ブロック)をしておくと楽に手術が受けられます。

  3. 伝達麻酔

    痛みをおこしている部分から痛みとして感じる脳までの、痛みを伝える神経の道筋をブロックしてしまう方法で、次の2つがあります。

    1. 脊椎麻酔

      虫垂炎(盲腸)や帝王切開の手術のときなどに行なわれる麻酔方法で、下半身麻酔のことです。背中からアプローチして、脊髄神経に直接麻酔液を作用させる方法で、麻酔が効いている部位より下は、知覚神経も運動神経も全て麻痺してしまいます。そのため、歩行や排尿、排便にも影響が出現し、美容外科・外来手術ではあまり使用されません。

    2. 硬膜外麻酔

      同じく背中からの麻酔ですが、脊椎麻酔よりも浅い部分に麻酔液を作用させるため、調節性に富み、目的とする部分(バスト、お腹、太もも、お尻)だけを麻酔することが可能です。知覚神経だけに作用させることも出来るため、外来での広範囲の手術にも適しています。適応となるのは、豊胸術や脂肪吸引など体幹部(頭部以外の部分)の手術です。大変優れた麻酔方法なのですが、手技的に難しいところがありますので、一部の美容外科で行なわれております。

  4. 静脈麻酔

    腕に点滴を取り、そこから鎮静薬や鎮痛薬を注入する麻酔法です。 ひと昔の静脈麻酔薬は代謝に時間がかかるものが多く、一度静脈麻酔をかけてしまうと、覚めが悪くて半日程度ボーっとしていたりするケースもありました。現在の静脈麻酔薬(プロポフォール)は体内で早期に代謝されるため覚醒が早く目覚めが爽やかです。また制吐作用があるので、覚めてから気持ち悪くなることもありません。通常では麻酔を終了してから数分で覚醒し、30分から1時間ほど休んでからご帰宅されます。

    「眠っている間に手術が終了して覚醒が良く短時間で帰宅できる。」良い点が多いので、最近では適応が広がり静脈麻酔で手術を行なうケースが多くなってまいりました。しかし麻酔中は呼吸器系や循環器系、神経系の全身管理を行なう必要があります。“エーブ クリニック”では、静脈麻酔は麻酔設備が整った環境で行なうべきであると考えています。

  5. 全身麻酔

    麻酔作用のあるガスを呼吸することにより、意識と痛みを取る方法です。広範囲の手術や痛みの強いもの、口の中からの手術、または患者さまの状態により行ないます。実際の方法はまず腕に点滴を取り、そこから静脈麻酔薬を注入し、眠っている間に、鼻または口から細い管をのどの奥に通してガスの麻酔薬を流します。手術中はガスの濃度を変化させることにより、手術操作に対応していくことが出来ます。その後はリカバリー室で、数時間(3~5時間程度)お休みいただき、状態が良好であれば帰宅していただきます。
    ひと昔前は全身麻酔をかけると、1~2泊入院されることが当然でしたが、最近は麻酔技術の進歩や効果の良い麻酔薬(覚めが良くて副作用が少ない)が開発されているため、全身麻酔でも手術当日に帰宅可能となりました。(日帰り麻酔⇒「学会報告」のページをご覧ください)

麻酔の目的

さて手術を行なうに当たって麻酔は必要不可欠ですが、何を目的として何のために麻酔をかけるのでしょうか。『無痛の状態』にするためでしょうか?『眠った状態』でいるためでしょうか?いくつかの目的がありますが、全ては一つの目的に集約されます。それは『手術を安全に行なうため』です。

麻酔専門の医学では、全身麻酔の4大要素として、1.意識の消失(眠った状態にします)、2.鎮痛(痛みを無くすようにします)、3.有害反射の抑制(内臓に負担がかからないようにします)、4.筋弛緩(体の危険な動きを止めてしまいます)が、重要項目とされています。最近は5大要素としまして5.ホメオシタシス(恒常性)の維持(体が安定している状態を保ちます)が、加えられています。

手術中は、「意識が無ければ痛みを感じることが無いから、それでOKだ!」ということではいけません。麻酔がバランスよく効いていないと、患者さま自身は眠った状態にあっても、体が痛がっているため脈が速くなったり血圧が上昇したりします。言わば、眠りながらマラソンをしている状態になり、内臓(特に心臓や肺)に負担がかかります。そのような状態が長く続くと、もともと心臓に持病をお持ちのかたや、内科系の病気(高血圧、糖尿病、喘息、アレルギーなど)をお持ちのかたは、危険な状態に陥る場合があります。手術中は麻酔専門医や医療スタッフが、常に患者さまの全身状態を観察し、安全管理に対する処置を適切に行なうことにより、その危険な状態を回避する事ができます。

医療事故が起こらないようにするためには、「未然防止:事故を未然に防ぐこと」を心がけることが大切です。異常事態が発生してからの迅速な対応はもちろん必要ですが、異常事態を起こさないようにすることが麻酔をかける医師の重要な役割となります。“エーブ クリニック”では、全ての患者さまが安定した状態で安全な手術が行なわれるように、麻酔専門の医師・医療スタッフが患者さまの安全管理に努めています。

“エーブ クリニック”の麻酔

これまでにお話した麻酔法は、当院では全て施行することができます。一般的には、手術範囲の小さなものは局所麻酔で行ない、ある程度広範囲のものは神経ブロックや硬膜外麻酔、長時間の手術や口の中からの手術は全身麻酔行ないます。“エーブ クリニック”で行なわれている特徴的な麻酔方法をご紹介いたします。

  1. 日帰り全身麻酔

    “エーブ クリニック”では、痛みなどの手術侵襲が大きいものや、口腔内や鼻腔内など気道に関係する手術に対しては全身麻酔を行なっていますが、入院の必要は無く、その日のうちにご帰宅が可能です。美容外科に限らず一般医療の分野でも、以前は全身麻酔を受けた後は入院して経過観察することが当然でしたが、最近は麻酔技術の進歩や効果の良い麻酔薬が使用されているため、全身麻酔でも手術当日に帰宅する傾向になってまいりました。(参考:「日帰り麻酔の安全のための基準」:克誠堂出版) 日本麻酔科学会の中に「日帰り麻酔研究会」がございますが、以前当院でも輪郭形成術などに行なっている日帰り全身麻酔の現状を報告いたしました。(日帰り麻酔⇒「学会報告」のページをご覧ください)しかし“エーブ クリニック”では、全てのケースに日帰り全身麻酔を推奨する考えではありません。手術内容・患者さまの状態・バックアップ体制など「安全のための基準}が整っていないと、重大な事故につながる危険性を含んでおります。日帰り全身麻酔は、安全に行なえる設備が整った環境で、一定の基準を満たした場合にのみ最大限の注意を払って行なうべきものであると考えています。

  2. 持続的静脈麻酔

    2001年に日本でもプロポフォールが使用されるようになってから、静脈麻酔の適応が拡大し、現在では各科手術・処置、ICUでも臨床の場で幅広く使用されています。プロポフォールは1965年にイギリスで開発された静脈麻酔薬ですが、その効果の良さに瞬く間に広がり、今では全世界で100ヵ国以上、2億人以上に臨床使用されています。利点・特徴は、何といっても覚めの良さです。他の静脈麻酔と違って代謝が良く蓄積作用がないため、覚醒の状態がウトウト少しずつ覚めるのではなく、クリアにスッキリ目覚めます。麻酔薬の再分配によって、一旦目が覚めてからまた麻酔深度が深くなることもありません。また制吐作用があるので、吐き気もなく気持ち良く目覚めます。良い点が多いといってもやはり薬剤であるので、特に呼吸器系や循環器系に対しての重篤な副作用もあります。“エーブ クリニック”では、静脈麻酔も全身麻酔のひとつであるので、全身管理ができる設備が整った環境で行なわれるべきであると考えます。

  3. 豊胸バッグサイズ術中確認

    バッグによる豊胸術の手術中に、テストバッグを入れて大きくなったバストの形を、無痛の状態で見て確認することができます。これは以前、日本形成外科学会と日本美容外科学会で報告いたしましたが、硬膜外麻酔と静脈麻酔を組み合わせることにより、手術中に起きて確認することが可能になります。(豊胸術の麻酔⇒「学会報告」のページをご覧ください)方法としては、まず点滴を取って静脈麻酔で眠っている間に硬膜外麻酔をかけて手術を開始し、テストのバッグを入れた時点で静脈麻酔を切ります。数分で目が覚めますので、座った状態でご自身のバストの大きさや形を鏡で見て確認していただきます。硬膜外麻酔が効いているので痛みもありません。患者さまの中には、手術の時に自分が望むバストの大きさや形がまだ分からない、あるいは決まっていないというかたがいらっしゃいます。また、手術前のカウンセリングで『Dカップがいい』と希望されて実際にDカップになったとしても、本人が元々イメージしていたサイズが違っていた場合、求めていたバストが得られなかったということになります。そのため手術中に実際バッグを入れてみて、『本当にこの大きさ、形でOKだ』と見極めていただくために手術中確認をおこなっております。しかし『手術中は怖いのでずっと眠っていたい』とおっしゃるかたには、全身麻酔をかけて完全に眠った状態で手術を受けていただくこともできます。麻酔はひとつの方法だけではなく、ご希望やご状態に応じて臨機応変に対応が可能です。

  4. 神経ブロック

    痛みを伝える神経の根もとを麻酔してしまう方法です。局所麻酔だけでなく神経ブロックを併用すると、手術が楽に受けられます。たとえば鼻の手術の場合、単純に局所麻酔だけでも手術を行なうことは可能ですが、鼻の皮膚に直接注射針を刺すのはとても痛いので、左右の頬にブロック麻酔(三叉神経第2枝:眼窩下神経ブロック)をしておくと楽に手術が受けられます。また局所麻酔だけでは数10分~1時間以内に効果が無くなり痛みが出現してきます。その場合でもブロック麻酔をしておくと、長時間の手術にも無痛の麻酔効果を持続させることができます。ブロック麻酔は鼻だけではなく、口唇や他の部位にも併用することが可能です。

終わりに

麻酔による死亡発症頻度は22万人に1人、致死的な麻酔薬のアレルギー反応である悪性高熱症は5万人に1人、心肺停止に直結する肺塞栓症は10万人に3人の割合です。交通事故と比較した場合、アメリカの統計ですが自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率は1万人に3人、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は10万人に1人なので、麻酔事故の発生件数はかなり少ないといえます。数字から見ると極めて少ない件数ですが、医療事故、特に麻酔に関する事故は常に起こり得る可能性があります。これだけ医療技術が進歩した現在においても、残念ながら事故発生率を0%にすることはできません。しかし、常に安全管理にアンテナを張って「未然防止」を心がけていけば、限りなく0%に近づけることは可能です。私たち“エーブ クリニック”は、事故発生率0%を目指して、絶えず全力で安全管理に努めます。

このページをご覧頂いて麻酔に対してのご理解が深まり、手術を受ける患者さまの不安が少しでもなくなりましたら大変嬉しく思います。

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